黒織部(黒茶・黒白)

若い頃からずっと作り続けている作品です。
鍋のフタと胴が合わさったときに響き合う模様を考えました。
この絵付けは、全体の配分だけを赤インクで付けてから、フリーハンドで描いていきます。

シンプルな色合いの中に、動きのある楽しさを出したくて、数年かかっていくつかのパターンが出来ていきました。
フタのツマミにも工夫をしたら、「それがとても持ちやすい」という声をたくさん頂いて、新しいデザインが機能を生かせることを実感し、若かった私に大きな励みとなりました。今も、その事を大事に考えながら製作しています。

黒織部 ブイヤベース鍋 径240mm

黒織部 線紋 (茶)
渋いデザインですが、私にとって欠かせない一点です。

黒織部 キャセロール 1人用 径160mm

黒織部 鯰土鍋 4人用 径310mm
沼や湖を泳いでいる鯰のイメージ。火にかけると口の下からピューっと湯気が出てきます。

黒織部 唐草紋 3人用 径280mm
日本の伝統的な模様の唐草をデザインしました。
「バラの花の模様に見える」とよく言われます。

黒織部 丸鶏スープ鍋 高さ254mm 外径250mm (口の内径は210mm)

ある時、面識のない、日本在住の香港の方から日本語で1枚のファックスが届いた。ファックスには、「こんな鍋を作ってもらえないですか」という依頼文と鍋の絵が描いてあった。

縦にとても長く、口が少しすぼまった形。とりあえずその方に電話をしたら、ダメ元でファックスしたんですと喜んでくれた。すでに私の鍋を使っていて、気に入って下さっていると話して下さった。

鍋のことを詳しく聞けば、丸鶏一羽と乾物を入れ、長時間コトコト煮てスープを作る鍋だそうだ。彼らの文化では、大切な時には必ず作る料理だと知った。

そこで試作しては連絡を取り、彼と相談しながら製作していった。

この細長い形に約5ℓの水と丸鶏が入り、弱火でコトコト大きな対流で長時間煮ても、口がすぼまっていて水分の蒸発にムダが無く、美味しいスープとなる…
素晴らしいアイデアを頂いた。

この鍋は、個展に出す度に不思議な程、必ず買ってくださる方が見つけてくれる。その度に、この鍋の持つ文化が、その方を惹きつけるのだろうなと感じている。大きなことを教えられた気持ちになります。