「誰もやっていないことをやりたくなった。」大量生産の工房に生まれた反動と今。

明治はじめから続く工房で土鍋とひとり向き合う毎日

私が土鍋を中心とした展示会を開くようになって、今年で30年を迎えます。
本当にたくさんの方々の支えで、何とかずっと続けて来ることができました。

土鍋の個展を開けるようになった当初は、土鍋で展示会、個展など、長く続けていけるのか、まるで自信がなかったものです。(いまも自信などまったくありませんが、…)

土鍋の量産の工房に生まれ育ち、見飽きるほど土鍋を見て育った私が、若くして工房を継がなければならなかった時、それとは別に、自分が心から打ち込める何かを持たずにはいられなかった気持ちは、今も鮮明に覚えています。

けれど振り返ってみれば、
土鍋の量産の工房に育ったからこそ、無意識のうちに体にも心にも染み入るようにその基盤が入り、だからこそ伝統的な土鍋の作り方を大切に守りながら、新しいデザインへと向っていけたのだと思います。

コロナ禍の今、ここを乗り越えて行こうと、このサイトを立ち上げていく過程で、初めて自分の仕事を少し客観的に見つめる良いチャンスをもらえました。
このサイトの立ち上げを含め、これまで支えて下さったすべての方々に、心から感謝を申し上げます。

と同時に、

またこれから、
まだまだこれから、です。

2020年 仲秋
稲葉 直人 拝